Tさんは、瓦を葺くのがなにより好きだと言う。「昔ながらの瓦は、確かに重いし、葺くのにも時間がかかる。技術もいる。でも、今の新建材の屋根に比べると、ずっと長持ちするし、いつまでも艶がある。今の屋根は、最初は見た目もいいし軽いから作業もしやすいけど、10年か20年たつと、水を吸ってボロボロになっちゃう。その点、昔ながらの瓦は、茶ちんと同じ焼き物だから、水を吸ってダメになるなんてことはまずない。年月が経っても、いつまでもきれいだね」都会では、めっきり少なくなってしまった瓦屋根。
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住宅自体が使い捨て、住み捨てで20〜30年のサイクルで建て替えられるのだから、瓦ばかりが長持ちしてもしかたない。瓦も、家に合わせて、20年の寿命があれば充分になっているのだ。長持ちさせる技術が必要でないなら、Tさんのような瓦職人も、必要なくなる。子供の頃から瓦職人の父親を見ながら、自分も瓦職人になったというTさんは、どんなに過酷でも、やはり、昔ながらの瓦の屋根を張りたいと言う。Tさんの話を聞きながら、私の頭には、小学生の頃に歌った、「鯉のぼり」のメロディーが浮かんでいた。「甍の波と雲の波、重なる波の中空を、橘香る朝風に、高く泳ぐや、鯉のぼり」たぶん、“甍の波”とはどんなものか、知らない子供が増え、この歌も、いつか歌われなくなるのだろう。